age managment

文字サイズ small base big

日本エイジマネージメント医療研究機構 抗加齢医療の健全な普及に向けて

イベント&セミナー 詳しくはこちらから
ハッピーエイジングとは 詳しくはこちらから
HOME > ハッピーエイジャーインタビュー> ハッピーエイジャーインタビュー;佐々木 俊弥

ハッピーエイジャーインタビュー

年齢を重ねるごとに元気を増し、常に新しいことへとチャレンジするパワーの源泉とはどのようなものなのでしょうか?
ハッピーエイジャーインタビューでは、活動の内容から思い描く未来の展望までを紹介。そこから、ハッピーエイジングを手に入れる秘訣をひも解きます。

佐々木 俊弥

佐々木 俊弥

スローフードすぎなみTOKYO代表 http://www.slowfood-suginami.com/

プロフィール

1963年東京生まれ。早稲田大学大学院ロシア文学修士課程修了。セミナー運営会社に勤務しながら「荻窪アート楽市楽座」等のイベントを地元杉並区で立ち上げ、中央線沿線での地域活動に関わる。2002年8月「スローフードすぎなみTOKYO」を設立、代表に就任。スローフードジャパン理事。CAMUNet(代替医療利用者ネットワーク)運営委員。著書に「スローフードすぎなみTOKYO宣言!」他
個人ブログ:「さりげなくスローフード」

 
Challenge

 “食の喜び”を見つめ直して豊かに生きる ― スローフードが教えてくれること 


§スローフードが生まれた背景

スローフードは1986年、イタリアのブラで生まれた市民運動です。当時イタリアでもファストフードがチェーン展開されはじめ、大量生産・大量流通・食品添加物・遺伝子組み換えといった「食の均質化」の波が次第に押し寄せてきていました。特に、生産―流通―消費のそれぞれの現場がかけ離れてしまっており、お互い何がどうなっているのかがわからないし、関心がない。本来あったはずのそうした食のつながりを取り戻す、それも地域単位で。そこから、食の楽しみと喜びを味わっていこう、という運動です。ただゆっくりと食べることではありません。普段何気なく口にしている食材や、その食材の背景にある生活文化について考えたり、共に語り合いながら食事を愉しむことの大切さをもう一度見つめ直そうとする実践的な運動です。そこには日々時間に追われ疲れきっている生活を、いったん立ち止まって食を見つめ直すことで「喜びに満ちた生活」に変えようという思いがあります。スローフード協会は、3つの理念のもとに様々な活動を世界各地で展開しています。1つめは、生物多様性を守ること。2つめは、生産者と共生産者(消費者)をつなぐこと。3つめは、味覚教育を進めることです。具体的な活動例は、食文化に関する書籍の出版、シンポジウム・試食会の開催、希少な食材の生産・販売の支援、味覚教育プログラムの推進、食の専門家を養成する「食科学大学」の運営などがあげられます。今ではイタリア本部をはじめ130数ヶ国に1,000支部があり、日本は48支部で1,500人の会員がいます。


§スローフードとの出会い

私がスローフードについて初めて知ったのは、2001年に私が運営委員を務めるCAMUNet(代替医療利用者ネットワーク)のセミナーで、島村菜津(「スローフードな人生!」著者)さんに講師を依頼したことがきっかけです。当時私は杉並区内でアート系と環境系のNPOの理事を兼務していて、既に地元で活動していました。環境系の活動をしているときに、家庭から廃棄される生ごみの8割近くは水分だということを聞いたんですね。つまり、水を燃やすのに高額の費用がかかっているという事実がある。こういうナンセンスな無駄をなくせばゴミ処理にかかる経費も削減できると知って、家庭は環境問題を意識するいい切り口だと思っていたわけです。ただ、環境というとイメージ的に硬過ぎるのか、市民が乗りづらいんですよ。そんな時スローフードと出会ったわけですが、食というテーマから、環境・健康・地域を全部カバーできるので、これはひょっとすると今までの延長線上でできるのではないかと感じました。でも、もともと料理を作るのも食べるのも好きでしたから、食には関心がありましたね。もちろんお酒を飲むのも好きです(笑)。


§「スローフードすぎなみTOKYO」を設立するきっかけ

2002年に島村さんに誘われて、日本のスローフードの立ち上げ会に行ったんです。全国から約60名が集まっているのを目の当たりにして、こんなに大勢いるのかとびっくりしました。それで、よし、自分も杉並でやってみようという気になったんです。その会合で、環境意識がとても強く、自治意識も高い杉並の地域の特性を紹介し、それを健康・環境・教育・福祉につなげ、その真ん中に食をおいて地域運動をやっていきたいと話しました。その時にスローフード協会のイタリア本部から来ていたレナート・サルド氏が共感して声をかけてくれ、イタリア本部のアジア地域担当者を紹介してくれたことから設立が現実のものとなったんです。振り返れば色々な人との出会いの中で、いつも節目の時に良い助けがありましたね。


§スローとは“つながり”

なぜか子供の頃から「地域とのつながり」という意識がずっとあるんです。もしかしたら、幼少時代を歌舞伎町で過ごしたことが影響しているのかもしれません。母親がそこで郷土料理店をやっていて忙しかったので、仕方なく近くの飲食店に入ると「おー、来たか来たか」なんて大人たちが歓待してくれるわけです。まだ人情が残っている時代ですよね。行けば無条件に自分を受け入れてくれる場所があった。そういう垣根の無さが嬉しかったし、他人から優しくされた経験が、今でもつながりを大切にしたい気持ちの根底にあるのかもしれません。今の日本人は特に内向きになり過ぎているんじゃないかと思います。自分たちの狭い世界の中だけで充足してしまっている状況に、危機感を覚えますね。そこを開きたいという思いは絶えずある。自分だけ良い状態に満足するのではなくて、全体が良くならないとイヤなんです(笑)。スポーツ観戦が大好きなので、そこから影響を受けた部分もあります。WBCのイチローなんか、自分が一生懸命やっていてそれが結果的に周りを巻き込んで、実にいい影響を与えていますよね。演じながら盛り上げつつ、かつ一歩引いて全体も見る、あんなプレイングマネジャーみたいな形になれたら理想的ですね。


§五感で味わう味覚教育

我々の活動の中心は「親子で見つけよう!本当の味」という味覚教育です。スローフード協会では「食育」ではなく「味覚教育」と言っていますが「食育」だと栄養バランス重視というか、食本来の楽しみではなくて健康維持のための薬的なイメージになってしまいます。もちろん栄養も大事ですが、それ以前にまず食は楽しみや喜びであり、貴重なものであるということを五感でわかってほしいんです。杉並区立杉並第四小学校で行うワークショップでは、毎回テーマを決めて子供たちにまず素材から親しんでもらいます。事前に我々も素材の勉強をするんですが、毎回多くの発見があってとても面白いですね。予習する段階で楽しいし、当日子供たちの思いがけない反応を見るとそれもまた楽しい。今まで12回やってきましたが、じゃがいもや大根でも、初めて見る種類の多さにびっくりしますよ。親御さんも一緒に楽しみながら、帰りには料理のレシピももらえてみなさん喜んで帰ってくれます。それに公民館などではなくて、小学校で開催できるのがまたいいんですね。教育の直の現場に入れるということは、信頼されている証でもあるわけですし、やりがいもまたひとしおです。蕎麦打ちのときなどお父さん方の参加も多く、60人近く集まって大盛況でした。そのほかイベントの出展や、生産の現場を訪ねることも活動のひとつです。現場に行くと生産者ごとに苦労が違います。単一栽培で、ひとたび病気が流行ると全滅してしまう悲惨さも実感としてわかりました。いかに多品種のものを作って全滅を防ぐかということは、すなわち生物多様性(地球全体に多様な生物が存在すること)につながります。


§中央線沿線の風土とスローフードの関係

スローフード運動をしていて、地元杉並の強みはかつてのカウンター・カルチャー(主流・体制的な文化に対抗する文化)が暮らしの中に根付いているところじゃないでしょうか。というのは、中野、高円寺から三鷹にかけて自然食品店が駅前に必ずあるんですよね。それらのお店ができ始めたのは、学生運動が落ち着いた後ぐらいからで、どうも新宿を中心とした学生運動の延長線上にあるんじゃないかと思えるんです。推論の域を出ませんが、学生運動が収束したあとの生き方の選択として、当時まだ新しかった有機農業に注目する一派が出てきたということなのかもしれません。中央線沿線には自然食品店のほかに整骨院やマッサージ、鍼灸院が多く、なぜか宗教団体も多い(笑)。自然食品、健康療法、宗教といったジャンルが集まりやすい土地柄も、今日的なオルタナティブ・カルチャー(もうひとつの選択としての生き方、ライフスタイル)を受け入れる風土ができているからではないでしょうか。


§“利他の心”が活動のモチベーション

ロハスは個人運動(利己)、スローフードはどちらかというと社会的な運動(利他)です。そういうことに興味がある人じゃないと、結果的には物足りなくなるようです。イベントを通してみんなの笑顔を見たりすることで、自分も満足できるような利他的な心がないと続かないんでしょうね。もちろん食の知識は増えますし、美味しいものを食べられる楽しみも少なからずありますよ(笑)。どんな趣味でもそうであるように、自分が楽しいという気持ちがなければダメです。関わっていて楽しいと思えれば、自分の居場所が確かにあるという安心感がありますから、とても心地いい場になりますよね。


§こだわり過ぎず、気軽に始める

スローフード的な食べ物とは何かと言うと、good(美味しい)・clean(環境に優しい)・fair(生産者が公正な対価を得ている)の3つをカバーしたものだとスローフード協会会長のカルロ・ペトリーニ氏は言っています。でも野菜など毎日の食材選びに関しては、私自身特に神経質ではないですね。スーパーで普通に買ったりしていますよ(笑)。強いてこだわりをあげるなら、お米は山形の生産協同組合から直に買っています。あと調味料はネットなどで調べて安心できるものを使っています。例えば塩だったら沖縄の粟国の塩。市販のものより割高ですが、実際に製塩所に視察に行って、内容の素晴らしさに納得した逸品です。一般に精製しすぎているものはあまりよくありませんね。食品を選ぶ時に少しでもそういう意識を持ったり、近くに自然食品店やオーガニック系レストランがあれば行ってみるとか、店主にちょっとお話しを聞いてみるとか、できるところから食に対する意識の見直しを始めてもいいですね。最近は有機栽培や農家から直に仕入れた野菜を売る大規模販売店が増えてきました。マルシェジャポン(全国8都市で開催する都市住民参加型の市場)のような産直の市場も人気があるみたいですし、都会でもそういった生産者と共生産者(消費者)の顔が見える環境が整いつつあるんじゃないでしょうか。


§“いい場の共有”こそスローフード

自分にとってスローフードとは社会や世界を見る切り口ですね。食材にこだわり過ぎるのではなくて、その周辺にある社会的な現象にも大変興味があります。いわゆるお皿の上だけでなく、外側にも気を配るということですね。
ただ、食だけに限りませんが、私自身が一番しっくり来る考え方はやはり帯津良一(帯津三敬病院名誉院長)先生の“ときめき論”です。先生は何に対してもときめきが必要だとおっしゃるんですよ(笑)。それは「健康のために何かを食べなくてはいけないというのでは、強制や義務感になってしまう。そうではなくて、食べたい、美味しい、幸せ!という気持ちこそが免疫力をアップする」ということです。先生は医者ですが、心というものをすごく大事にする方なんですね。まさにスローフードの目指す食の喜びですよね。それともうひとつ、先生は「場」というキーワードをとても重視していらっしゃいます。いい場に身を置くということが非常に大切であると。私もいいエネルギーに満ちた場を共有するということが、実はスローフードのキーワードではないかと最近感じています。そもそも食物自体がすでにエネルギーの結晶であるわけだから、いいエネルギーを頂くにはどうしたらいいか気を配ることも大切ですね。


Future

海外への回路を開く


§食に関する世界的な問題

今スローフード協会が注視している問題のひとつに、バイオパイラシー(生物の海賊的行為)があります。インドやアフリカの土地で育てていた薬草などの種の利権を、先進国の企業が押さえてしまったため、地元の農家は特許料を上乗せされた種をお金を払わないと育てられなくなりました。インドなどは特に深刻な状況で、元々貧しかった農民の自殺者が後を絶たないと言います。このように種が利権と投機の対象になっていることに対して、スローフード協会は生物多様性と共に種の利権を守ることを強く宣言しています。種だけでなく、土地や水の利権押さえも深刻化しています。気がついたら水源の利権を外国に押さえられてしまっていた、ということが日本で起こらないとも限らない状況です。スローフード協会は世界的な運動だけに、そういった各国の熾烈な政治紛争にも非常に注目するとともに、市民運動としてどう活動すべきかということを模索しています。まだその脅威が実感としてわかない日本で、楽しく食事をすることがスローフードだとばかり考えていると、各国のスローフードに対する意識とはどんどんかけ離れてしまうことになります。「日本は砂漠化しつつある大陸に比べて比較的雨量などが恵まれており、豊かな部分もあるけれど、こういうことについては強い問題意識を持っています」と、日本の現状やスローフード会員としての考えを、これからは海外に正確に発信していこうと思っています。


§自身のライフスタイルについて

スローフードの活動が仕事とリンクしつつある今、その境界線がなくなってきたように思います。プライベートでは映画やアート鑑賞をするのが好きですね。時間がある時はまとめて5本映画を観ることもあります。仕事・スローフード活動・プライベートのバランスについて聞かれることがありますが、時間のやりくりは自分次第ですし、そこをきちんとマネジメントする意思があれば、かなり多くの問題が解決できるのではないでしょうか。いつもハッピーでいるために心がけていることは、絶えず物事のいい面を見るようにしています。たとえ人と意見が違っても、その背景に何があるのか、一歩ひいて考えるクセをつける。必ず自分が100%正しいと思わず、自分自身も他者として見るという意識が持てると余裕が生まれますね。あと物事がうまく進まなかったり、待つことを余儀なくされている状況のときは、ただ漫然と待っているだけということがあります。自分のやるべきことを見直してみて、そこをまずきちんとやっておくことが大切だと思います。健康維持のためにやっていることは、ウォーキングや腹筋ぐらいですね。食についてもバランスに気を付けたり、五分づき米に雑穀を入れて食べる程度です。あまり栄養的なことにこだわり過ぎないで、食本来の楽しさを重視したいですね。加齢は当たり前なので特に気になりませんが、人生で自分の使命が果たせているかどうかは気になります。外見的な老化よりも、なんとなく年を重ねていきながら、よくない時間が積もっていくことの方が怖いですよ。いい時間を重ねていくことが、自分にとってのヘルシーエイジングです。


§これからの夢

日本と海外の対等な回路を開き、双方向で瞬時に等身大の情報交換ができるといいですね。あと、いつか沖縄で環太平洋スローフードサミットを開きたいです。沖縄は日本であって日本でないといいますか、アジアに限りなく近い。今回の普天間問題のように、意識も本土の人にはないものを持っています。そんな場所からアジアへの意識を開いていくようなことをしてみたいと思います。(2010年6月16日取材)

ハッピーエイジングポイント
物事のいい面を見る
食本来の楽しさを重視する
みんなでいい場を共有し、いい時間を重ねていく

top

〒106-0032 東京都港区六本木5-1-3 ゴトウビルディング 1st 6階 TEL 03-3501-5555 FAX 03-3501-5575
Copyright 2007. 日本エイジマネージメント医療研究機構. All rights reserved.